人知れず 濡れにし袖の 乾かぬは 阿武隈河の 水にや 有るらむ       古今和歌六帖 紀貫之
阿武隈に 霧たてといひし から衣 袖の渡りに 夜もあけにけり   
      重之集  源 重之
思ひかね つまどふ千鳥 風さむみ 合曲河の 名をやたづぬる     
    夫木和歌集  藤原定家
名にしおはば 阿武隈川を 渡りみん 恋しき人の 影や映ると     
       堀河百首 顕仲
阿武隈の 霧とはなしに よもすがら 立ち渡りつつ よをもふるかな  
     後撰和歌集 藤原輔文
ぬれ衣と いふにつけてや 流れけん あぶくま川の 名こそ惜しけれ         堀河百首 永縁
かくしつつ 世をやつくさむ 陸奥の 逢隈川を いかでわたらむ            中務歌集 中務 


その他数々の歌に詠まれた阿武隈川は 岩背国(福島県白河旭岳から北上して陸前国(宮城県亘理 岩沼で太平洋に注ぐ全長239kmで全国第6位の大河である。逆に北から南に流れ石巻に注ぐ北上川とともに陸奥の二大河川だ。その殆どを東山道 奥州街道と平行して流れているので古くから歌に詠まれたのだろう大和朝廷は阿武隈川の流れる中通りに石背国を設置しその中に白河郡・岩瀬郡・安積郡・安達郡・信夫郡を置きそれぞれに郡役所である郡衙阿武隈川沿いに設置したのです。白河は市内関和久遺跡と仮宿廃寺跡・岩瀬には須賀川市栄町遺跡と上人壇廃寺跡・安積には郡山市清水台遺跡・安達には二本松市郡山台遺跡・信夫には福島市五老内遺跡と腰の浜廃寺跡である。郡衙すべてが阿武隈川沿いにあるのは古代から阿武隈川の舟運の重要性を物語る。だから福島県にはその流域に多くの歌名所が出来たのでしょう又川の記載も多様で 逢隈(吾妻鏡) 大熊(信達史) 合隈(八雲御抄) 合曲とも書かれ”おおくま”とも呼ばれた。河口の町亘理 にはJR逢隈駅があり 槻木町にも古びていたが逢隈旅館などがあった。 文字のイメージから男女の逢引きばかりでなく 男同士の再会を掛けた意味の歌が詠まれているようだ。又舟運として明治初頭 東北本線が出来るまでは仙台湾から福島内陸への重要な交通手段であった(平成14年8月3日)
    上 阿武隈源流 西郷村
福島県の「母なる川・阿武隈川」の源流は、那須連山の麓の原生 林の中を流れる清流です。「ふくしまの水三十選」

左端
 最上流西郷村甲子高原を流れ出る阿武隈川

 稚児舞台 阿武隈川の流れが作った怪石奇岩の地中流二本松市安達町にある 福島県景観10に指定されている  国体ではかぬースラロームにも利用された素晴らしい絶景を誇るここにも義家伝説がある 

      阿武隈川