安積山 山の井 其の4

安積山は紀貫之によって詠み書きの基本だと褒め上げられ 山の井も清少納言の枕草子によって全国9箇所の「井は」の中の一つにPRされた。ことに山の井は陸奥でただ一つ選ばれ残りはは大和と山城の国でけである。その他にも彼女は陸奥の岩瀬の森 転寝の森 名取川 宮城野 轟橋などの歌枕の地をものずくしに載せている。勘ぐるに恋人の実方が陸奥守として左遷されていたからかもしれないがそうだとすれば微笑ましいことである。 蛇足だが彼女はまた「遊びは」の項では 「遊びは顔の見えぬ夜がいい・・」などと粋なことを述べる面白い女性だ 
(平成14年7月7日) 


冬深み 氷やいたく 閉じつらむ 影こそ見えぬ 山の井の水        金塊和歌集 源 実朝
山の井の 水に映れる 月影は ぬれて曇らぬ 鏡なりけり                    能因
山の井の 浅き心を知りぬれば 影見むことは 思ひ絶えにき          待賢門院堀河集
安積山 かすみの谷し 深ければ 我がもの思ひ はるるひまなし         清原深養父
水の面に 影さえへ映る 安積山 浅きは人の 契りなりけり               順徳天皇
神無月 安積の山の うす紅葉 時雨の雨は やまずともなし                壬ニ集
安積山 さも浅からぬ 敵とみて 逢瀬にいさむ 駒の足並み               源 頼義
山の井の やまむといへば なほざりの 浅き心は たのまれぬかな      元良親王集
影だにも 見えず成行く 山の井は 浅きより又 水やたへにし    後撰和歌集 紀のめのと
古の 我とはしらじ 安積山 みえし山の井 かげにしあらねば    新勅撰和歌集 寂連法師