塩釜の 前に浮きたる 浮島の 憂いて思ひの ある世なりけり 古今和歌集 山口女王
陸奥は 世を浮島も ありと云ふを 関こゆるぎの 急がざらなん 小野小町
定めなき 人の心に くらぶれば ただ浮島は 名のみなりけり 拾遺和歌集 源 順
定めなき 浪にただよう 浮島は いづれの方を よるべかとみる 風情集
浮島の 花見る程は 陸奥に 沈める事も 忘られにけり 橘 為仲
塩釜の 浦の干潟の あけぼのに 霞に残る 浮島の松 後鳥羽院
世のなかは なほ浮島の あだ浪に 昔をかけて ぬるる袖かな 明日香井集
いづくなる ところをかみし わが身より また浮島は あらじとぞ思ふ 和泉式部集 和泉式部
隔てける 人の心を 浮島の あやうきまでも ふみ々つる哉 四條御息所女子
たのまれぬ 心からにや 浮島に たち寄る浪の とまらざるらん 中務集 中務
浮島の 松の緑を 見渡せば ちとせの春ぞ 霞そめける 元輔集 清原元輔
この他数多くの歌に詠まれた浮島は、『塩釜の前に浮きたる』とあるからといって塩釜港に行って前方の海を眺めてもその様な島はいっこうに見当たりません。逆にその島は港の後ろ野田の玉川を越えて多賀城に近い内陸の住宅地にあるのには驚く事でしょう。奥の細道の市川橋を渡りY字路を右に行くと壷の碑 玉川寺を両脇にみて旧東北歴史資料館跡を右に折れるとそこに歌枕浮島があるのです。正に自然造形の不思議とも云えましょうがこの小山を嶋に喩えた古人の感性こそ素晴らしい。 |
浮島神社石段と櫻 |
明治天皇歌碑
旅衣 あさたつ袖を ふきかえす
松風すゝし 浮嶋が原
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